この星に生まれた、何よりも誰よりも。

 視線を感じて顔を上げた。

 お兄ちゃんが私を見つめている。

 ......ん?

 

「......潮時、かな」



 潮時......?

 「気づいちゃったんだ」と、お兄ちゃんが声を上げて、小さくほほ笑んだ。

 その顔は、いつも通りなはずなのに、どこか寂しさが混じっていた。......ように思えた。

 すっ、と音を立てずに上げられた指。

 人差し指が、ある方向を指していた。

 空。

 

「な。......見えるか? 空、綺麗だろ?」

「? ......うん」



 急に何を言い出すのかと思いきや、私はうなずいた。

 星と同じ、とってもきれいな群青色の空。

 まるで群青色の絵の具を水に溶かしたような淡い色。

 ......?

 何も言わず、黙りこくってしまったお兄ちゃん。

 どうかしたのかな?

 お兄ちゃんは、へらっと笑った。



「あの空はね、朝になると、光があふれるんだ。優しい光が、静かに降り注いで、こぼれだす。それはそれは、もうきれいな光景なんだよ」

「そうなの? すごいね......! ......すっごく、綺麗なんだろうなぁ......」

 

 その様子を説明して、うっとりしながらお兄ちゃんに返事を返す。

 お兄ちゃんが、私のほうを見て笑う気配がした。



「すっごく、綺麗だよ」

「見たことあるんだ......! どんな感じ?」

「それはもう、言葉にできないくらいの景色なんだよ」

「見て、見たいなぁ............ここにきてから見る景色は、すっごく綺麗だもん」



 あの草原も、白色の彼岸花畑も、赤に染まった彼岸花畑も、空色の彼岸花畑も。

 この、柔らかな色をしている空だって。

 すっごく、綺麗だった。

 言葉にできないほどの、景色だった。



「きっと、すっごく綺麗なんだろうね......」



 声を漏らした私に、お兄ちゃんは静かに言った。「ううん」「え?」



「氷空は、その景色を見られない」