この星に生まれた、何よりも誰よりも。


 白色の彼岸花は、液体がしみていくように真っ赤に染まっていく。

 多分、その様子を見て想像しちゃった液体、というものは。

 血、だと思った。

 そして、声が聞こえる。

 呻き声。苦しそうな声。辛そうな声。

 真っ赤に染まった彼岸花からそんな声が聞こえた。



「———真っ赤に染まった彼岸花からは、たくさんの苦しみが。
    白に染まった彼岸花からは、純粋な優しさが。
    黄色い彼岸花からは、手のひらからこぼれるほどの希望と光が」



 お兄ちゃんの声。

 お兄ちゃんは、静かにこの光景を見つめて告げる。

 すうっと、さわやかな風が流れる。

 陰鬱なものをすべて追い払ってしまうほどの、優しい風。

 髪の毛がなびいて、お兄ちゃんの顔が一瞬隠れた。

 顔を上にあげる。

 きらきらと、光が降ってくる。

 光が、さらさらと音を立てて彼岸花一つ一つに舞い降りる。

 そして、その光をいっぱいにためて、少しあふれてしまった彼岸花は。



「———天空の色。ソラの色に染まった彼岸花からは、あふれんばかりの笑顔と幸せが」



 天空の色に......。ソラの色に染まっていた。

 
 
「だからもう、——大丈夫。その命は、今は幸福になっている」



 そう声が告げて。

 私は、ゆっくりと顔を上げた。

 私の中にあるものは、静かな。

 静かで、時々、くすぶって。
 
 でもそれでも、手放せなかった、人のぬくもり。

 ———激情。



「今は幸せだったとしても、それが本当によかったの?」

「............」

「そんなのわかんないけど、めちゃくちゃわかんないけど、幸せだって決めつけんのは違うから。私には、もうそれで、円満解決とかは思えない」



 ぎっ、と視線をとがらせる。

 相手に突き刺さってしまいそうなほど、視線ととがりにとがらせて。

 静かに言う。



「———私が会いたかったのは。私が聞きたかったのは。そんなこと言うお兄ちゃんじゃない。
 たとえ、お兄ちゃんが私の知ってたお兄ちゃんじゃなかったとしても、そんなことを言うのは許さない」