「すごい......きれい......」



 不思議というべきか、綺麗というべきか、美しいというべきか。もっとほかにもあるけど。

 全部が当てはまって、全部が違う。

 もう言葉にしてしまったら、別のものになっちゃうような感じ。

 そのまま景色に見とれていると、



「————」



 誰かの、呼吸音が。
 誰かの、気配が。
 誰かの、姿が。

 そこには、あった。

 呼吸が止まる。

 もう一か所しか見ていられなくなる。

 ............ああ。

 目を見開く。

 そして閉じてから、もう一度開ける。

 いる。

 誰かの呼吸音。

 誰かの姿。

 分かる。

 感じる。

 
 もうそんなことは、分かり切っている。



「———......」


 
 ゆっくりと、こちらを振り向く。

 さらり、となびくのは、空色の髪。陶器のように白い肌。

 空色のパーカー、ジーンズ生地のゆったりとした半ズボン。

 

「———お兄ちゃん......」



 風がやさしく吹いて、髪を揺らした。

 私たちはしばしの間、見つめあう。

 そっくりな輪郭。私とよく似た瞳の形と眉。

 ————私たちは、もう一度、ここで出会うことは決まっていた。

 お兄ちゃんは何も言わない。



 ふと、風向きが変わって。

 ざあっ、と音がした。