「......っ、これはっ......」
ゆっくり歩く。
二人の思いを、飲み込むように。
美弥も、疾風も。
行きたいほうに行けばいい、と。そう言ってくれた。
だから、きっと、お兄ちゃんも。
......なんて、ばかかもしれないけど......でも、何となく、そんな気がした。
澄み渡る空の色。どこまでも続くように見える草原。
走り出せ。
そんな声が頭の中で響く。
気づけば、私は走り出していた。
お兄ちゃんっ......。
行くよ。
行くよ。会いに、行くよ。
瞬間、目の前を厚い霞が覆った。
「......っ!」
前が見えなくなる。
どうしよう、これじゃあ......っ。
あせった気持ちを落ち着け、ごくりと唾をのむ。
さっきよりも、厚い、厚い、厚い霞。
目の前が真っ白だ。
視界に入るのは、真っ白な霞。
もう真っ白すぎて、何が何だかわからない。
やめてよ。
私、まだお兄ちゃんに会ってないのにっ......。
ああ、もうほんと何なんだろ。
美弥と疾風に、協力してもらったのに......。
うつむく。小さく下唇をかむ。
そして、顔を上げて————
また、目を見張った。
もう、霞一つなかったから。
そして、さっきとは違う光景が広がっていた。
足元に咲き誇っている彼岸花。
よく見るのは赤色だけど、ここの彼岸花は白色だった。
遠くを見ると、白いものが遠くまで続いている。
一面、白色の彼岸花。
白い彼岸花の花畑。
空は、さっきと同じような、
いや、さっきよりも、透き通っていて澄み渡っている。
きれいな空の色。
美しく咲き誇る彼岸花。
雲一つない、透き通った空。
ありえないような美しい光景に、目を見張った。
美しい、とため息が漏れそうなほどの景色。
それが、今ここにはあった。