「......ぁ......」



 考えて末に、こぼれてきたのはそんな声。

 声にもならない、音だった。

 何を言えばいいのかわからない。

 最近、ずうっとそれを言っている気がするけれど、本当にそうだった。

 だって、おかしいよ......。

 なんでみんな、私のことを気にかけてくれるんだろ。

 

『行きたいほうに行けばいい。それだけ』



 きらり、と。
 しずくが光った。

 それがまるで、美弥と疾風が私を見つめているかのようで。
 それがまるで、美弥と疾風のきれいな瞳が、私を見ているかのようで。

 だから私は、



「..........」



 あの時だって、今だって、こんなに言葉を詰まらせてしまう。

 見られているようで。
 見透かされているようで。

 私の弱い部分を、見られているような気がした。

 弱い部分を必死に隠して、隠し通して。

 見られたく、なくて。
 知られたく、なくて。

 ———だからきっと私は、こんなに弱いのだろう。

 

「.................うん、」



 でも、だけど。

 私は。

 私は、


 静かにこくり、とうなずいて。

 風が吹いていくほうへ、歩き始めた。