大きく息を吸って、ゆっくり息を吐く。

 力を抜いて、深呼吸、深呼吸。

 

『......会いたい?』

「......?」



 急に優しい声がかけられて、首をかしげる。

 ......え?

 どういうこと......?

 言えないんじゃなかったの......?



「うん」



 こくり、とうなずく。

 そりゃあ、お兄ちゃんに会いたいよ。

 会えなくてもいいから、声が聞きたい。

 無事だとわかれば、それでいい。

 傲慢に聞こえてしまうかもだけれど、本当にそれだけでよかった。

 だけど、本音を言うなら。

 会いたかった。あって、話したかった。

 美弥と疾風とは、ああなってしまう前に話したけど。

 でも、お兄ちゃんとは何も話せてない。

 あの時の様子だと、すごく心配してくれてたみたいだったから......。

 

『......そっかあ。じゃ、仕方ないか―』

「あの、美弥、疾風......その、あの」

『気にすんな。空杜は元気だぞ』

「そう言われても......」

『ううん、平気だよ!』

『こいつもこう言ってるしな』

「......あ、えと......」

『大丈夫! 気にしないで?』



 明るく美弥がそう言う。

 でも、だけど......。

 お兄ちゃんとは、会えない理由があるんじゃあ......。



『そこだ』



 『そこだ』?

 目をぱちぱちさせる。

 意味が分からない。どういうこと?

 ——ビュオッ......

 とたん、強く風が吹く。

 その風は、一定方向に吹いていて。

 ......え?

 

『そこに、進めばいい』



 掛けられた声。

 それは、はっきりと私に進む方向を教えてくれていて。

 きっと、でも、それだけじゃなくて。