美弥の声。



『氷空だ! すっげー久しぶりだわ~!』



 疾風(はやて)の声。

 きょろきょろとあたりを見回す......けど、姿は見えない。

 ていうか......ここどうなってるの⁉

 久しぶりに会えたっていううれしさと、どうなってるのっていう疑問の気持ちが膨らんで、もうごちゃごちゃだ。


 
『ふっふっふー。おひさー』

「......美弥? なんで......」

『んんんー、秘密でーす!』

「なんだ、そりゃあ......」

『......悪いな』

「......こっちこそ」

『いやいやいや何言っちゃってんの!』



 まるで、まだ一緒にいられるかのような。
 まだ、明日も簡単にやってくるかのように。
 明日も、同じように一緒にいられると、確信があるかのように。
 一緒に過ごせるんだと、無邪気に思っていたあの時のように。

 私たちは、しょうもない会話をする。

 からからと、無邪気に笑う。

 しばらくそうしていたけれど、私は気づいたことを口にした。

 ......すぐその違和感に気づいた。

 いない。
 ここには、ある人がいない。



「......ねぇ、お兄ちゃんは......?」

空杜(そらと)はなー。ここには、いない』

「え............?」



 胸に、ひんやりとしたものが流れ込む。

 お兄ちゃんがいない?

 

「なんで......」

『......』



 黙り込んでしまう美弥と疾風。

 私はさらになぜだか不安になって、もう一度尋ねる。

 

「ねぇ、お兄ちゃんは......? なんでいないの? なんで何も言わないの? それって、何も言えないこと?」

『......』



 何も言わない。

 沈黙が下りる。

 私も、こうなったら黙っているほかなかった。

 なんて言えばいいんだろう。

 どういったら、いいのかな。

 まずは落ち着くために、深呼吸する。