植物状態とは言い切れないと言っていた。

 でもそれは、そうなる可能性もあるということだ。

 目の前が真っ暗になった気がした。



「心配なさらないでください。いいお知らせですよ」



 そう、安心させるように看護師がほほ笑んだ。

 俺たちは目を見開く。



「彼女は非常に生命力が高く、心拍数も通常です。このままいけば、きっと目覚めますよ」

「......っ本当ですか⁉」

「氷空は......植物状態のままではないんですね......⁉」

「はい。きっと目覚めます」

「確証はありますか......⁉」

「はい、もちろんです。こういった役職柄、嘘をつくことはありません」



 そう看護師が自信満々に言って、来夢たちが笑顔でうなずく。

 そんな声を遠くに聞きながら、俺は気が気ではなかった。


 
         ◆


 このまま目覚めなかったら、どうしようと、気が気でない。

 はあ、と息をつく。

 肩負傷、足首負傷、その他諸々。

 そう判断された俺は、一週間の入院を余儀なくされていた。

 ......大丈夫なんだが。

 だが、そのおかげで、氷空の様子が一日中わかる。

 氷空の容態がいち早くわかることに安心していた。

 決して深刻な状態じゃないといわれても安心できるわけがない。

 早く回復してくれるのを祈るしかできない。

 ......情けない。

 まさか自分に、こんなに弱いところがあったとは。

 はぁ、とまた溜息をつく。

 一体、何回溜息をついただろう。

 そのまま氷空の病室へと移動する。

 ちなみに、あいつらは軽傷で、入院するまでもないと判断され、学校に行っている。

 扉を開くと、から、と音がたった。

 さら、と、柔らかそうな空色の髪。空色、というには色素が薄い色。氷空色、とでもいうべきか。

 瞳だって、氷空色だった。

 瞳っていうのは、噓をつけばつくほど濁っていくものだ。

 何度だって、それを見てきた。

 でも、濁りどころか曇り一つない瞳。

 心空(ここら)として出会った時、あまり瞳は見ていなかったが、少ししてから曇り一つないと気づいた。