———(ひかり)が、落ちる。

 ズキッ、と包帯がまかれたところが痛む。

 走れ。走れ。動け。動け、私の足! 

 足の痛みを無視して、気づかないフリをする。

 星は、もうここからでは姿が見えない。宙に、落ちているんだ。

 塀に足をかける。

 瞬間、ぐっと足を踏ん張る。

 塀に足をかけて、跳ぶ。

 跳び降りる。

  星の姿が見えた。

   落ちる。
    落ちていく。
     重力に逆らえず、私たちは落ちていく。
     
      落ちる速度は変えられないけれど、早く星のところに行きたくて、宙をかく。

       足を動かす。
        近づく。
         近づく。
          もう、すぐそこだというところまで近づく。

           手を伸ばす。
            でもあと少しのところで、手が宙をかく。

             それでも、手を伸ばす。

              手の先が、かすった、
               届いた———瞬間、星の頭を引き寄せる。
     
                両手で抱いて、星を引き寄せる。

                 彼をかばうように、彼の頭を抱く。

                  少し足を曲げて、守るように彼の頭を抱き寄せた。

                   そのまま、ぎゅっと抱きしめる。

                    落ちる。
                     落ちていく。
                      重力に逆らえず、私たちは落ちていく。
                       落ちる、落ちる、落ちる。
                        私たちは落ちていく。

                        ヒュッ、と。
                       今、青い光が尾を引いた。
                      青い光の(ほし)が空に流れた。
                     私がこういうものを見たのは3回目。
                    私が見た中で、きっと
                   一番長い間光ってた星だ。
                  流星だと気づいたときには、
                 もう消えてしまっていたけれど。
                     
               『流れ星が流れている間に、
                   3回願い事を言えば願いはかなう』