この星に生まれた、何よりも誰よりも。

 ............私は、

 そのとき、聞こえてきた大きな音。

 誰かが階段を駆け上がってくる。足音がする。

 でもそれは、陽詩たちじゃない、みんなじゃない、知らない人のもので———。

 この、気配は............、

 バンっ!!!!

 勢い良く、開かれた扉。その扉のところに、あいつがいた。

 楽死(らくし) 座冷(ざれい)。“月殺(げっさつ)”の副総長。

 瞬間、目の前が黒く染まる。

 お兄ちゃんをやったのは、風山だけじゃなくて、楽死もだった。

 お兄ちゃんを打ったのは風山だったけど、お兄ちゃんの肩をさして身動きできなくしたのは、楽死だった。

 息が止まる。嫌な予感がする。

 楽死が血走った目で私を見た。



「おまえぇェェェエ!!」



 いや何事。

 ............ってそんなことを言ってる場合じゃないっ。

 楽死は、小型の銃を持っていた。

 楽死の視線が、私から動いて風山にうつる。



「総長......」



 楽死が何かをつぶやいた。でも、声が小さすぎて聞こえない。

 

「......ね。し...どけ」

「......」

「......しね。死ねえぇぇえ!!!」



 ......ッ!

 銃口が私に向けられる。ぐ、と引き金にかけた指に力がこもっている。

 ———ダァンッ!

 

「............っ、う」

「......ひかり......⁉」



 私をかばった星は、小さく声をもらした。

 肩を抑えている。その隙間から、赤いものが流れ出しているのが分かった。

 どくどくどく、と血が流れる。

 それを見て、私は口を抑えて、目を見開いた。

 ......な、んで......。

 また、あの時みたいに......。

 続いて、もう一度引き金がひかれる。



「......ッ!」

「...ぁ......」



 星は強いけれど、人間だ。

 足元に一発。

 さっきうたれたところ以外にも、私をかばってできたけががいっぱいあった。

 足首に命中した星はよろめき、両足で踏ん張る。ガッ、と低い塀に突っかかる。

 そのまま星は、後ろへと倒れた。けど、その後ろはもう空中。

 星は、ゆっくりとバランスを崩して、宙へ投げ出されていく。