この星に生まれた、何よりも誰よりも。

 一人そうして首をかしげる。

 傍から見たら絶対おかしい人だ。うん、きっとそうに違いない。

 そんなことを思いながら、はっと我を取り戻して、《リーパァー》の首元に手刀を打ち込む。

 

「............白、昼夢......Tatarian aster......」



 そんなことをぽつりとこぼして、静かに目をつむった。

 

「......Tatarian ......aster? 紫苑......」



 Tatarian asterというのは、紫苑という花のことを指している。

 ......なんで、そんなことを言ったんだろう?

 にしても、抵抗もせず手刀を打ち込まれるとか......何かあったのかな?

  ◆



 ————「追憶」「君を忘れない」「彼方にある人を思う」————

 《リーパァー》が過去を思い出し、残した想いは届かず、空に光る(ほし)の瞬きに吸い込まれていった。

 
 
  ◆

「にしても、(ひかり)は......」


 
 けがをしながらも《死術者(マジシャン)》と戦っていた星のことを思い出し、きょろきょろと視線をさまよわせる。
 
 大丈夫かな。最後に見たあの時より、ひどいことになっていませんように......。

 周りを見てみるものの、星は見つからなかった。
 
 こ、これ、星どこに......っ。

 あせって右側を見ようと視線を動かすと......。



「......なっ、えっ、なんでそこに............!!」

「ちょっと静かにしてろ」



 いつの間にか右隣にいた星は、「動くなよ」と言いつつ、私のパーカーの袖をやさしく押し上げて、じかに腕に触れた。

 赤く染まってしまったパーカーを見たら気づくことなのだが、攻撃が当たってしまい、出血している。

 よごれちゃう......。

 そう思い、腕を引こうとするも、がっしりとつかまれてしまった。

 腕についた血を拭われる。



「あ、あの、よごれちゃうよ......? それに、自分でできるし......」

「いいから。............見てらんない」



 どこからか出されたきれいな包帯は、消毒された私の腕にあざやかに巻かれる。