「ハ!」

「......っ⁉」




 《死神(リーパァー)》が私の間合いに飛び込んでくる。

 突っ込んできたときの勢いをのせて、足をけり上げる。

 私は反射的にステップで退いた。

 何がしたいの......⁉

 下がって、呼吸を整える。

 プッ、と頬から薄く血が飛んだ。

 頬の薄皮一枚切られている。

 ナイフをかすったような頬に、ゆっくりと血がにじむ。

 ......けりだけでこんなことできるわけないと思うけど、何か仕込んでた......?



Ladies and gentlemen(レディース アンド ジェントルメン)‼」

「......《死術者(マジシャン)》ッ⁉」

「はーいっ! ショーの時間だよーっ!!」



 間合いに入ってきて、サーベルを前に突き出す《マジシャン》。

 何とか体をそらしてよけると、今度はレイピアを器用に扱って上から下へと振り下ろす。

 ヤバいって......!

 器用すぎるし、私二人の相手しなくちゃいけない......!

 《マジシャン》とは互角にできる、と思うけど..........《リーパァー》は殺し屋のトキから実力と経験が上。

 勝てる、勝機はない気がする..........っ。

 (ひかり)は......大丈夫かなっ......。

 ダメな気がする。

 強くないと思ってるわけじゃないけれど、この状態でここにいるのはさすがに危ないと思うんだ。

 そう思って、視線をよこした先には、ぶっ倒れた風山(かざやま)がいた。

 ......何事⁉

 目を見開くと、目の前から風を感じた。

 油断してた......!

 《マジシャン》が真っ赤の瞳を強くとがらせて、私を見る。

 避けられない......。

 そう判断すると、私は両腕をクロスさせて、後ろにとんだ。

 するり、とサーベルが皮膚の薄皮を吸い取るようにかすれて、

 カキンッ......。

 

「っ、え......」

「こっちはやっとくから、あっち相手して」

「ぅ、うんっ......」



 頼もしさを感じながらうなずく。