単純で、ばかみたいで、それでいて。

 子供すぎるって笑われてしまうような言葉。

 いったい、いつこんなバカみたいな言葉をあいつらにかけることができるようになったんだろう。

 そんなのは、あの時からだって今ならいえる。

 前までは言えなかったかもしれないしごまかしたかもしれないけど、今ならいえる。

 

「............」

「ホントは、あんたたちにも、感情っていうものがあったはずだよ」

「............そんなん、ないってわかってんだろ」



 俺らにあるのは、ただ欲だけだ、と。

 そう言い切って、口元に威圧的な笑みを浮かべる。

 ......欲だけしか持ってない人間なんて、いないと思うけどな。

 私は静かに、心の中でそんなことをつぶやいて、《リーパァー》を見つめた。

 感情とか、欲とかは、たぶん誰でも望んでしまうようなもの。

 私だって、欲あるもん。

 でも、欲があるのは感情があるからだって、思う。

 感情がなかったら、何も思わないでしょ?

 私も欲はある。

 もっとみんなと一緒にいたいだとか。

 ずっと、みんなの笑う顔を見ていたいだとか。

 欲っていうものは、きっと。

 感情があるからこそあるものだ。

 感情がなかったら、生まれないもの。



「感情は、あなたたちにも......」

「ねえよ」



 あってたまるか、と言いたげに、《リーパァー》は目を伏せた。

 

「......なぁ、サイゴに一つ教えてくれ。キサマはなぜ、感情というものにこだわる?」



 感情というものなんかなくたって、生きていけるじゃないか。

 なぜ、みんなみんな感情なんかにこだわるんだ?

 そう言って、《リーパァー》はさも不思議そうに首をかしげた。

 

「............知らなかったんだ」



 感情が───誰かを思うということが、こんなに当たり前のようで、ありあふれたもののようなのに。

 特別だったということを。

 ............きっかけはいつでもあった。

 なんとなく、見逃してしまっていただけなんだ。

 私はその時のことを思い出して、唇を小さくかみしめる。



「......感情は、誰にとっても、当たり前のものじゃない。感情があるからこそ、人はぶつかり、殺しあう」

「......」