無謀で、馬鹿で、そんなダメダメな策なのは分かってる。

 だけど、もし......成功したら......!

 《リーパァー》が目を見開いて私を見る。

 その呆然とした顔を見ながら、私はマスケット銃をけり落した。
 
 ガンっ!

 マスケット銃は軽く宙を飛び、そんな音を立てて屋上に落ちた。

 

「な......」

「少しでも可能性があるのなら、その可能性に賭ける。......たとえ、その可能性が1%でも」



 そう言って、私は《リーパァー》を見つめた。

 そんな小さなこと、とっくのとうに、忘れてしまっていた。

 8年前から、無残に命を奪う側に私がいるということを知っていたように、忘れてしまっていたんだ。

 でも、だけど。

 星が言った言葉が、ふわりと浮かび上がって、光る。

 優しく、あたたかくなっていき、さらに優しい光をまぶした。私の心に。

『......全力で、行けばいいんだ。
 後先とか考えずに、全部全部を、相手にぶつけて来いよ。
 氷空は、一人じゃない』

 そう、優しく、心からの笑顔で。

 心から笑った顔で、そう星は言ったんだ。

 ずっとずっと、いろんな秘密を隠してきていた私に、

 作り笑いを張り付けて、ただ自分が苦しまないように自分だけをかわいがってた私に、心から笑って。

 一人じゃない、って言ってくれたんだ。

 

「は、......1%? たったそれだけの可能性にすがるって? まったく笑えないアメリカンジョークだぜ」

「アメリカンジョークを言ったつもりは毛頭ないのだけど」



 《リーパァー》はあきれたように馬鹿にしたように、私のことを下に見てそんなことを言った。

 そんなことは気にしないで、私は回想をする。

 そうだ。

 星が、そう言ってくれたから、だから。

 私は《リーパァー》の向けて、言葉を放つことができる。



「行こうよ」

「......?」



 意味が分からないというような顔をする3人。

 押しかけてきたのはそっちのはずなのだけれども。

 《マジシャン》も《リーパァー》も風山も、きっと。

 意味が分かっていない。私が伝えたいことの意味を。

 私は意味が分かってなさそうな3人を前にして、もう一度繰り返す。



「行こう」

「はあ?」

「......」

「どこにだよ、行くっつったって」

「......外の世界に。暗闇を抜けたところにある、光の世界に。暗闇を抜けたところにある......未来へ、一緒に、行こうよ」