そのとき、



「———っ!」



 どさ、と冷たい屋上に倒れこむ。

 なんで、いつも、

 そこにはよく知ってる人がいて。

 大切な人がいて。

 好きな人がいて、涙がこぼれそうになる。

 

「......っ、は......まに、あった......」



 そうして君は息をついて、体を起こす。

 カツン!

 そんな音を立てた方向を見てみれば、そこには銀色のナイフが落ちていた。

 私の上に覆いかぶさるようにして、私をナイフからかばってくれた(ひかり)

 星の言葉に、涙がこぼれそうになって。

 私は、ぐっと力を入れて、立ち上がった。

 私は、もう、大丈夫。



『なんで......』

『いったろ? 氷空が行くなら、どこにでもついて行ってやる、って。......一人じゃない』

『......っ』

『氷空の周りではいつも人が死んで、いなくなる。誰も、氷空の本音には気づいてくれなかったんだ、って言ってたよな? それは、氷空が本音を言ってなかったからじゃないのか』

『......ッ、あ......』

『全力で誰かを思えるんだから、全力で氷空はお前の大切な人を愛してたんだから、今度は、お前が全力で本音言って、ぶつかれよ』

『......私は......』

『......大丈夫だ。氷空が、どこに行くとしても、ずっと一緒にいる......だから、』



 全力で、行けばいいんだ。

 後先とか考えずに、全部全部を、相手にぶつけて来いよ。

 氷空は、一人じゃない。



 そう、星は言ってくれた。

 だからきっと、もう大丈夫。



「わ、わた......しは」



 私は、声を絞り出した。

 お兄ちゃんが、私を嫌いでも。

 私はお兄ちゃんが好きだ。

 大好き、だ。

 それでいいんだね。



「私は、お兄ちゃんに嫌われてるかもしれないけど、それでも、お兄ちゃんが大切なの。それで、いいよね」

「......はあ? 嫌われてんのに、相手が大切? ばっかじゃねーの」



 気の抜けた声を上げて、抗議してくる風山。