とく、とく、とく、とく。

 とくん、とくん、とくん、とくん。

 どくん、どくん、どくん、どくん。

 星が、ふわりと優しく私を抱きしめた。

 とく、とく、とく、とく。

 どく、どく、どく、どく。

 彼からも、私からも、高鳴って動いている心臓の音が聞こえる。

 誰かの、階段を上ってくる音が、今は遠くに聞こえた。

 一緒にいると、苦しくて、うれしくて、悲しくなって、期待しちゃって、信じられないくらい、ドキドキして。

 ......この音は、どっちの何だろう。

 星も、ドキドキしてる?

 私と同じ気持ちでいてくれてる?

 私は、温かさが伝わるたびに、胸が高鳴っていって。

 期待してしまって。


 
「......○、○」



 そうつぶやいた声は、風に乗っても、君には届かなかくて。

 でもやっぱり、聞いてほしいって思ってしまって。

 でも、期待してしまってるから、本気だから、返事を聞くのが怖くて。

 ああ、もう。

 なんで恋って、できないことが増えていくんだろう。

 なんで素直になれないんだろう。

 それはきっと、相手のことが本気で好きだから、だ。

 私は星の温かさに包まれながら、空を見上げた。

 出発する前、あんなに厚く覆っていた雲はもうどこにもなくて、

 ただ、群青色の空が広がっていた。

 月、なんて見えなくて、

 今日は、新月なんだなぁ。

 そんなことを考えながら、空を見つめる。

 群青色の空には、チカリ、チカリ、と静かに(ほし)が瞬いていた。

 まるで、(ひかり)みたいだ。

 真っ暗だった、私に光をくれた。

 暗闇の中で、君にもらった小さな光が、静かに光の尾を引いていて、今でも静かに心の中を明るく、けなげに照らしてる。

 たった一つきりの、光なのに、こんなにきれいに照らしてる。

 君にもらった光は、今でもまだ、光り輝いてる。

 ......ねぇ。