私たちは、堰を切ったように風を切る。

 一瞬で見えなくなってしまう流星のように、強く、素早く、明るく、光り輝いて。

 

「あはっ! 楽しい~!」



 《マジシャン》がそう笑いながら、レイピアを突き出す。

 反り返ってそれをよけながら、私は低くしゃがんで回し蹴り。

 でも、やっぱりそれくらいじゃへこたれない。

 後ろに少し飛んで回し蹴りをよけて、今度はサーベルをふるう。

 ねぇ、知ってた?

 施設からあの場所へ連れていかれたとき、すごく怖かったんだよ。

 そんな私に、《マジシャン》は笑いかけてくれたよね。

 あそこは抜け出してきちゃったけど、私は、《マジシャン》が好きだったよ。

 ...........だから、こんな《マジシャン》は見たくなかった。

 やめされられはできないかもしれないけど、でも、私は、

 私はレイピアとサーベルを両手に突っ込んでくる彼女をステップでよける。

 

「......な⁉」



 初めて焦りを見せた彼女の後ろに回り込み、首元に手刀を打つ。

 声を上げる間もなく倒れこんだ彼女の気道を確保しながら、私は



「......ありがとう、あの時話しかけてくれて」


 
 こつり、と額を合わせて、彼女をその場において、走り出した。

 思い切り足を動かし走り出したその先には、やっぱり星がいて。

 《リーパァー》が小さく舌打ちをして、ほくそ笑む。

 それと同時に、降ってくる無数の球。

 雨が勢いよく降り注ぐように、銃弾の雨が降る。

 ぐっ、と手首をつかまれて、走り出した星につられるように、私も走り出す。

 その間も、次々に振ってくる銃弾。

 当たったら、いなくなってしまうかもしれないそれを、走りながら視界の端に止めて走り抜ける。


 やっぱり、私たちはまだこんなところで、終われない。

 終わるわけがない。

 終わらないまま、私たちは走る。