逢魔が時。......昼と夜の間。

 もうすぐ、夜がやってくる。

 あの、悪夢を見る、決して明けることのない夜がやってくる。


 夜は、いつも嫌いだった。

 暗闇の中で、何もかもをなくしたあの悪夢を思い出すから。

 夜はいつも、私から何かを奪っていくから。

 でも、それは君も、誰かも、そうだったのかもしれない。

 そうだったのかもしれないけれど、もう暗闇の中では、何も見えなかった。



         ◆

「きっと、いつの日か、また出会えたら」



 そうひとり呟く。

 また逢えたら、向き合わなきゃいけないと思ってた。

 逃げ続けてばかりなのは、ダメだってわかってた。

 また逢えたら、伝えたいことがあった。



「......いこっか」



 私はそう告げて、外へと足を踏み出した。

 真っ黒に染まっている空。

 分厚い雲がかかっていて、光なんて何一つなかった。

 あの、悪夢のような逢魔が時だった。



氷空(そら)、ここであってるの?」

「うん、たぶん」



 少し歩いて、私たちはある場所にやってきた。

 場所は指定されてなかったけど、たぶんここだと思うんだ。

 私たちの、はじまりの場所。

 

「そうなんだ......こんなとこに、道があったんだね」

「それ、おれも思った」

「こんなとこに道があるとか、気づかないよなー」

「にしても、知らなかった......ここら辺は詳しいのに」

「なんか、もの悲しい感じだね」



 みんながそう言い、私もうなずく。



「私も最初、そう思った。引き返しとけば、私があんなことやめてればよかったのに......」

「......氷空? どうし...」

「ついたよ、《死神(リーパァー)》」



 私は(ひかり)の言葉を遮り、そう告げる。



「始まりの場所」



 《リーパァー》の声がする。

 場所、間違ってなかったみたい。

 場所は指定されてなかったから、間違ってたら、とそればかり思ってた......。

 ゆっくりと振り向くと、《リーパァー》が立っている。

 うしろに、“月殺(げっさつ)”のやつらもたっている。

 美弥、

 疾風、

 お兄ちゃんを殺したあの場所で。

 なんでだろう。

 怒りが、ふつふつと湧き上がる。