10月26日。

 私の誕生日の一か月後。

 大聖堂の鐘が鳴り響く............逢魔が時、我らの血戦を始めよう。

 そう届いたメール。

 その全文を頭の中で思い描きながら、私はぐるぐるとテーブルの周りを歩いた。

 そうしてから、何度も何度も息をつく。



「......はぁー......」

「いつまでやってんの」



 あきれたように声をかけてくる来夢。

 私は来夢の顔を見て、また、ため息をついた。



「おれの顔見てため息つくって、なんかひどくないか?」

「..................自業自得」

「今のは来夢の自業自得だ」

「ばかだな」

「な」

「おい、双子―! 自分勝手いうなー!」

「......舞那、どう思う?」

「............めんどい」



 そんな会話が繰り広げられているのを聞き流し、私は相変わらずぐるぐるぐると、テーブルの周りを歩く。

 そしてまた、天井を振り仰いで、ため息をついた。



「はあぁぁ......」



 美弥、疾風、お兄ちゃんにこのため息を聞かれていたら、「魂出てそう」と言われそうなため息をついて、またテーブルの周りを歩く。

 ............落ち着かないんだよ。

 今はまだ昼だけど......夕方? 夜? になったら、直面対決なのよ?

 どうしよう......落ち着かない......。

 うん、わかってる。

 一体何があったのかと、あきれてしまうようなことをやっているって、分かってる。

 だって、このテーブルをこうして回るのは、54回目。 

 ため息をつくのは、37回目。

 ちゃんと、数えてるから......わかってるよ......。

 自覚してる、のに......。



「おちつかないぃ............はあぁあああー......」



 また、魂が抜け落ちたかのようなため息をついて、テーブルの周りをまわる。

 そんなときもあるのだ。

 魂の抜け落ちるようなため息をつきたい日だって、ある。

 実際、私が今その状態。

 もし課外授業で、

 『すごくため息をつきたい日はありますか?』

 って聞いたら、何人の人が『はい=Yes』と答えるんだろう。

 そんなことを考えながら、私はまたため息をついた。

 そんなときも、ある、はず。