【side時雨】





「じゃ、またね。......ありがと」



 そういって笑い、昼休み終了の合図とともに理事長室を出て行った氷空(そら)

 奇打(きうち) 心空、なんて......。

 まあ、あいつは偽名を使わないと、すぐにあいつらにばれちゃうところにいるからな。

 俺はそう思いながら、あいつと出会った時のことを思い出した。

 まぶたを下ろし、遠い日の思い出に浸る。

 少しして目を開けた俺は、持っている書類に印を押した。

 そのまま、少し離れた場所においてあるスマホに手を伸ばした。

 スマホを引き寄せ、画面をタップ。

 電話をかけたときに響く音が、ピー、ピーとなった。



「もしもし?」

『もしー。なんかあったんか?』


 すぐにコール音がやみ、相手が電話に出る。

 電話をかけたのは、氷雨(ひさめ)だ。