ほくそえんでいた男、お兄ちゃんにあるものを向けている男が、あるものをつかんでいる人差し指に力を込めた。

 銃。

 銃口が、お兄ちゃんを見ている。

 お兄ちゃんは、小さく口を開く。



「――そら」



—————バンッ!!!



「生きて......――」




 咲いた。咲かせた。

 私の目の前で。私が突っ立っている前で。

 時が止まったままで。

 時がゆっくりと動いたままで。

 あいつらが、お兄ちゃんが。

 お兄ちゃんのそばに、

 鮮やかな真紅の華が――咲いた。

 鮮やかな真紅の華が、真紅の雨を降らせた。

 

「お兄ちゃん........! ..........お兄ちゃんっ!」



 思い切り力を入れて、私は叫びながら、腕を振りほどく。

 いきなりの大きな力によろめいた男を突き飛ばして、お兄ちゃんのところへ駆け寄った。

 どくどくどく、と血が流れる。

 血の出ていた場所を抑えても、止まらない。

 ぽつり、と、心の声が漏れた。



「なんで......なんでよ......なんでよっ!」



 ただ、理由だけを探して、私は叫ぶ。

 なんで、美弥は、疾風は、お兄ちゃんは、死んでしまうの。

 なんで、殺されなきゃいけないの。

 なんで、なんで、なんで、なんで。

 ねぇ、どうして?

 どうして、もう美弥は、疾風は、お兄ちゃんは、笑ってくれないの。

 生きていてくれないの。

 私、まだだれも殺してないんだよ。

 殺し屋になっても、一度も、そんなことしてないよ。

 なのに、なのに、なんで。



「いやああああああ—————っ!!!!!」



 噓だ、噓だ。

 こんなの噓だ‼

 信じたくない。

 信じられない。

 なんで............っ。

 いつのまにか、誰かが来て、“月殺”のやつらがいなくなっていく。

 

「《リーパァー》......」

「こいつ、始末するから待ってろ」



 私は、やっぱり何もできなくて、いつの間にかことは終わってて。

 そのまま、部屋に戻って、決意する。

 いやだ。

 こんなところにいたくない。

 こんなところには絶対いたくない。

 逃げる。

 抜け出してやる!