◆
いつだって、誰かを失うときは、オオデマリの香りがした。
仕事をしている途中だった。
私は今、9歳。
小学3年生、という年齢だ。
まあ、殺し屋になってからは学校なんて通ってないけど。
あれから、私はもう何も、組織に逆らうことがなくなった。
本当に馬鹿だよなぁ、と考える。
あ......でも、人は殺さずに逃がしてるから、逆らってることになるのか。
なんて、つまらないことを考える。
......あー......本当、何やってるんだろ、私。
今は仕事中。
というか、無事に逃がしたところだった。
夜の街を、歩いて帰る。
今日も特に、何もなかったな......。
あ......ここ、あの場所だ。
美弥と、疾風がいなくなったあの場所。
その時だった。
お兄ちゃんが、私を見ていることに気づいたのは。
「おにい、ちゃ......ん......」
「氷空!」
呆然とつぶやいた私に対して、お兄ちゃんはほっとしたように一息ついて。
また、あの時みたいに、無邪気に笑った。
久しぶりに、見た............。
お兄ちゃんの、無邪気な笑顔。
思わず見つめていると、
「......っ⁉」
“月殺”のやつらが現れて、私たちを引き離した。
誰かがにやにやと嫌そうに笑っている。
ほくそえんでいる男はあるものをお兄ちゃんに向けていた。
時が止まっているようだった。
ゆっくりと動いているようだった。
黒色の長袖のパーカー。
真っ赤な真紅のミニスカート。
その姿で、その格好で、私は目の前で起こっていることを突っ立ってみている。
足が動かない。
動くけど、動かなかった。
嫌な汗で、体中がひりつく。
鳥肌が立った。
お兄ちゃんは、こちらをふりかえって、私のほうを見る。
私を見る。
その目で、その口で、その動作で、
何かを伝えようとしている。
..................誰に?
ぼんやりとその疑問が飛んでくる。
そんなのもうわかっている。
私だ。
私に、何かを伝えようとしている。
..................言わなきゃ、わかんないよ......っ。
私はただ突っ立って、それを見ることしかできない。
“月殺”のやつらに、羽交い絞めにされる。
私も殺し屋だけど、私は握力というものがなかった。
ふりほどけない。
お兄ちゃんのところに行きたいのに、羽交い絞めにされて腕を振りほどけない。
まだ私は突っ立って、それを見ている。
いつだって、誰かを失うときは、オオデマリの香りがした。
仕事をしている途中だった。
私は今、9歳。
小学3年生、という年齢だ。
まあ、殺し屋になってからは学校なんて通ってないけど。
あれから、私はもう何も、組織に逆らうことがなくなった。
本当に馬鹿だよなぁ、と考える。
あ......でも、人は殺さずに逃がしてるから、逆らってることになるのか。
なんて、つまらないことを考える。
......あー......本当、何やってるんだろ、私。
今は仕事中。
というか、無事に逃がしたところだった。
夜の街を、歩いて帰る。
今日も特に、何もなかったな......。
あ......ここ、あの場所だ。
美弥と、疾風がいなくなったあの場所。
その時だった。
お兄ちゃんが、私を見ていることに気づいたのは。
「おにい、ちゃ......ん......」
「氷空!」
呆然とつぶやいた私に対して、お兄ちゃんはほっとしたように一息ついて。
また、あの時みたいに、無邪気に笑った。
久しぶりに、見た............。
お兄ちゃんの、無邪気な笑顔。
思わず見つめていると、
「......っ⁉」
“月殺”のやつらが現れて、私たちを引き離した。
誰かがにやにやと嫌そうに笑っている。
ほくそえんでいる男はあるものをお兄ちゃんに向けていた。
時が止まっているようだった。
ゆっくりと動いているようだった。
黒色の長袖のパーカー。
真っ赤な真紅のミニスカート。
その姿で、その格好で、私は目の前で起こっていることを突っ立ってみている。
足が動かない。
動くけど、動かなかった。
嫌な汗で、体中がひりつく。
鳥肌が立った。
お兄ちゃんは、こちらをふりかえって、私のほうを見る。
私を見る。
その目で、その口で、その動作で、
何かを伝えようとしている。
..................誰に?
ぼんやりとその疑問が飛んでくる。
そんなのもうわかっている。
私だ。
私に、何かを伝えようとしている。
..................言わなきゃ、わかんないよ......っ。
私はただ突っ立って、それを見ることしかできない。
“月殺”のやつらに、羽交い絞めにされる。
私も殺し屋だけど、私は握力というものがなかった。
ふりほどけない。
お兄ちゃんのところに行きたいのに、羽交い絞めにされて腕を振りほどけない。
まだ私は突っ立って、それを見ている。

