この星に生まれた、何よりも誰よりも。

「......っ!......」



 ? ............疾風?

 疾風が急に黙ってしまって、あせる。

 何かダメなこと言っちゃったかな?

 どうしよう、私本当に何かしちゃった?

 あわあわしていると、「...びびった......」という疾風の声が聞こえてきて、首をかしげる。

 びびる?

 何に?

 ..................私に⁉

 なんか、すごい申し訳ないデス......。



「ご、ごめんね......」

「はっ?」



 あやまると、何言ってんの? とでも言いたげな声が降ってきて、顔を上げる。

 すると目の前には、疾風のさらさらとしたきれいな髪の毛がドアップ。

 え?

 どうなってるの?

 私は脳内がバグり、ちょっとした混乱状態に陥る。

 それがやっと落ち着いてきたときに、あたたかいものが触れているのが分かった。

 私......疾風に、抱きしめられてる......?

 

「わかってる? 俺も、男だってこと」



 頭に、疾風の吐息がかかる。

 疾風が男の子だってことは、知ってるけど......それがどうかしたのかな?

 

「お前の背負ってること、俺にも背負わせろよ、って言ってんの......」



 疾風の余裕のなさそうな声が聞こえて。

 私はその向こうに、キラッと何かが光ったのが見えて。



「......ッ......」



 何かが、疾風の喉元を赤く染める。

 何かが喉元を貫いていったのが見えて、私はまた、どうすることもできなかった。

 生暖かいものが、肌について、胸が苦しくなる。

 感情というものを、何かで縛られてしまったかのように。

 ここ、美弥が死んだ、あの場所に近い......。

 なんて、しょうもないことに気づいて。

 そして、やっぱり、誰かの気配がして、



「お前だから、あんなことしても殺してないんだからな。なのにまた、やってたのか?」



 仲間ごっこもたいがいにしろよ———。

 そんな言葉と同時に、殴られて背中を打ち付ける。

 私はまた、やってしまった。

 こうなることをわかっていながら、また、誰かのやさしさに溺れてしまって、抜け出せなかった。

 あの時も、今も、したのはオオデマリの香り。