この星に生まれた、何よりも誰よりも。

 そういうと、疾風はふっ、と笑った。

 

「............なんで笑うの、そこで」

「......さあ」

「なんで夜、外出てきてるの?」

「......さあ。氷空が知らなくてもいい話」

「何それ、気になる―」



 そういうと、疾風は黙ってしまった。

 え、あれ......?

 疾風が口を開いた。

 

「......知りたい?」



 え......っ。

 疾風が真剣だとわかる声色で、私のほうを振り向く。

 知りたい? って......。

 私が口ごもっていると、疾風はうっすらと唇に笑みを浮かべた。



「『なんで夜、外出てきてるの?』......なんて、氷空がいるような気がしたからに決まってるじゃん」



 ............だから、なんでそこで笑う。

 何も言わずに疾風を見つめる。

 すると、疾風は「今はまだ何もわかんなくていーから」とぶっきらぼうに言った。

 顔をそむけた疾風の耳が、ちょこっと赤く染まっていて。

 もしかして、なぐさめてくれたのかな......?

 私が、昼落ち込んでたから......。

 そんな想像をついしてしまって、私は影の中で、ばれないように小さく笑った。

 

「にしても、いーの? 空杜、心配してんぞ」

「............うん、いいの」



 『お兄ちゃんには、私が見つかったっていうことを黙っててくれないかな......?』

 私は二人に再会した時、そう口留めをしていた。

 二人はそれを、律義に守ってくれてたんだ。

 お兄ちゃんが心配してるのは知ってるけど............できれば、3人には私がいたっていうことを知ってほしくなかった。

 私が殺し屋だってことを、知ってほしくなかったんだ。

 もちろん、殺してるわけじゃなくて、“絶死願(ぜつしがん)”の皆に見つかってしまわないように、こっそり逃がしている。

 でもそれでも、軽傷を負わせてしまったことはあるわけで............。

 2人とも、あれから会おうとしてたわけじゃなかった。

 あれで、終わりにしようとしてたんだ。

 でも、2人があの時みたいに、かまってくるから、離れられなくなっちゃっただけで......。

 って、言い訳かな、これじゃあ。



「黙っててくれて、ありがとう」



 その言葉とともに、疾風を見つめてほほ笑む。