この星に生まれた、何よりも誰よりも。

        ◆

 やっぱり今日も、オオデマリの香り。



「まー、元気出せよ」

「無理」

「即答すぎるだろ......」



 私の隣で、疾風があきれたように言った。

 ミーンみんみん。

 どこか、気の抜けた音がする。

 5か月後。

 美弥が、死んでから、5ヶ月。

 ............私のせいだ。

 そんな言葉を、胸の内でつぶやく。

 疾風はそんな私を見てから、何かをつぶやいた。



「............俺にだけ、おぼれてくれてたらいいのに」



 でもそのつぶやきは、私には聞こえないくらいの声量で。

 

「え? なに?」

「んーん。なんでもねえよ」



 疾風はそうごまかした。

 疾風はまた、言葉を紡ぐ。



「別にお前だけが背負わなくても、いいんじゃねぇの?」



 お前のせいじゃないんだし。

 そう言った疾風に、私は何も言えなかった。

 ......よくないんだよ。

 もう一度、胸の内でつぶやく。

 私のせい、なんだから......。

 その日の夜。

 『氷空............、たすけて......ッ!』

 そんな声が聞こえた気がして、私は目を見開いた。

 美弥......美弥............っ!

 胸が苦しくなる。

 私は変装をせずに、部屋の外へと飛び出した。

 やばいよ......もう、夜なのに............。

 私は出てきてから、後悔し始めた。

 なんで、出てきちゃったんだろ。

 私、ほんとに......



「......ばかだなぁ」

「そう?」

「うわああああああああ⁉」



 独り言だったのに、思いがけない相手が返事をしたものだから、思いっきり肩がはねる。

 その相手は、口を開いていじけたように言った。



「そこまで驚くか?」

「お、おどろくって......!」

「氷空なら驚かなさそう」



 なにそれ。

 私が、驚くことは一回もなさそうってこと?

 あるのに。

 いや、驚かない人とかいるのかな。

 生きてる中で一度も......っ?

 私は自分でした想像に、びっくりした。

 と同時に、デコピンをされる。



「相変わらず、百面相してんの」

「そうだけど、だからってデコピンすることないじゃんっ......」