「華やかな恋」
 
 「約束を守って」

 「天国」

 それが、オオデマリの花言葉。

        ◆

 私たちは、いつでも一緒。



「いったぁ......」



 毎朝、同じ時間。

 同じ時間に目が覚める。

 私はぐっ、と伸びをしながら体を起こした。

 それは、あの日からだった。

 物思いにふけっていると、お兄ちゃんの声がした。

 

氷空(そら)っ、おはようっ」

「おはよ、お兄ちゃん」

「ねえ聞いた⁉」



 きらきらと目を輝かせるお兄ちゃん。

 私は何があったのかと、お兄ちゃんに答えた。



「聞いてないけど、何を?」

「今日はっ、でるんだって!」



 出るって何が。

 幽霊とかお化けが出るみたいに言ってるのは、ちょっと......だと思うよ?

 主語がないよ、主語が。



「肉じゃが!」



 お兄ちゃんのその一言に、私は目を輝かせた。

 肉じゃが......⁉

 肉じゃがは私の大好物。

 味がしみ込んで、少し柔らかくなったジャガイモ。

 口の中に入れると、ほろりと崩れて優しい味が口の中に広がる。

 玉ねぎも、少し味がしみ込んで、お肉もとってもおいしくて............。



「ほんとにっ⁉」

「本当だって! ほんとほんと!」



 やったね!とお兄ちゃんが言って、私はにこにこしたままうなずく。

 私たちはそのあと、朝の準備をして施設を出た。

 学校までの道のりを歩く。

 私たちは、捨てられた子供だった。

 あんまり覚えていないけど、どこかから電車が来るときになるあの音がして。

 なんだか凍えるように寒くて。

 静かに風が通り抜けて、震えていたところだった。

 真っ暗で、明かり一つなくて。

 その時に、ふわり、と優しくて暖かい空気が流れて、目を開いたら、そこは施設だった。