「時雨、氷雨。出てって」



 私はその言葉を口にした。

 巻き込んじゃったから、言わないとダメだってわかってる。

 いうから、お願い。

 このお願い、聞いてくれない?

 部屋に入ってきて、ソファに腰を下ろしている“群星”と“煌舞”のみんな。

 りいもいる。

 みんなが、私を咎めるように言う。



「氷空、それはちょっとな......」

「いうよ」



 私はその声を遮り、時雨と氷雨の目を見つめていった。

 

「いうよ。時雨と氷雨は、私の秘密、もう知ってるでしょ? 
 何回も、言いたくないの。何回も、聞いてほしくないの」



 だから、と。

 私は視線を下に動かした。

 顔をうつ向かせる。

 氷空色の髪が、はらりと顔にかかった。

 

「だから、出て行ってくれないかな」



 震える声でそう告げた私に、時雨と氷雨は静かにうなづく。

 そのまま、口パクで何かを伝えて、部屋の外に出ていった。

 『ずっと、信じてるから』

 パタリ、と。静かな、扉が閉まる音がする。



「聞いてくれる?」



 私は小さく口を開けた。

 聞いてくれる?

 私の秘密を。

 私の過去の物語を。

 きっと、聞いたらみんなに同情されてしまうような、気を使われてしまうような物語だけれど。

 それでも、聞いてくれる?

 7年前から止まり続けていた、私の闇の、時計が。

 闇の時計が、今ではもう、静かに逆回りを差し始めた。