『死にたくない......

 殺される........................‼』

「...ッあ......」



 死にたくない、という強い思いが伝わってくる。

 助けないと、

 何も考えられなさそうになった思考の中で、ただその思いだけが浮かび上がる。

 助けなきゃ、助けなきゃ............たすけなきゃ!

 死なせちゃだめだよ!

 死んじゃだめだよ!

 なのに、助けようとする思いが高まるほど、彼らは赤黒い水の中に沈んでいく。

 だめ..................!

 いっちゃだめ!

 それでも、私の思いは届かないまま、彼らは赤黒い水の中へと消えていった。

 
        ◇ ◆ ◇

 
「やめてええ—————っ!!!!!」



 私は自分の悲鳴で、目を覚ました。

 目に映ったのは、温かみのある真っ白な天井。

 私は飛び起きて、その部屋を飛び出した。

 走る。

 部屋の中は走っちゃいけないのは分かっているけど、今は緊急事態。

 行かないと............いかないと、死んじゃう......、

 美弥と疾風と、お兄ちゃんが......、いなくなっちゃう......!



「えっ、そらっ⁉」



 懐かしい声が聞こえたけど、私は目もくれず走る。

 必死に走る。

 懐かしい人たちが、追いかけてくるのが分かった。

 

「っ、そらっ!」



 “群星(ぐんせい)”のみんなが私を呼び止める。

 私はそれでも止まらない。
 
 止まれない。

 必死に走っていると、ふいに



「♪————」



 あたたかく、はかない、耳当たりの良い音が私の中に響いた。



 ——会いたいのに、会えない。

 あの時、もし自分があんなこと言わなかったら、あの人はまだ、この空の下で、笑っててくれたのかな。

 君をあの空の上へ送ったのは自分だけど、それでも私はキミをどこかで探しちゃってる。

 ねえ、もしまだ生きてたら、笑いかけてくれましたか?

 もしまだ生きてたら、私のこと、恨んでいますか?

 あのままでいい。

 あのままでよかった。

 あのままがいい。

 あのままがよかった。

 ああ、私はばかだね。

 ずっとずっと、キミがいた世界を作ろうとしている。

 キミのことを、探している。

 もう、手遅れなのにね。

 キミに言いたかった言葉も、伝えたかった言葉も、あの日の空の......あの空の上に行っちゃった。

 あの空の向こう側に行ってしまった。

 キミは、まだ生きててくれましたか?

 キミは、まだ笑っててくれましたか?

 ねえ、そんなことを言っても答えてくれないのは分かってるけど。

 だけど、ごめんね。

 キミは、ずっと、私の世界の中心でした。

 キミがいたから、この世界が、あの空が鮮明に見えたんだ。

 キミがいなかったら、

 あの空の青さも、

 こんなにもこぼれてしまいそうな感情も、

 キミが笑いかけてくれることも、

 世界は美しいんだってことも、きっとずっと、知らなかった。 

 だけど、ごめんね。

 生きててくれて、ありがとう——。