どこかで、きっと、みんなが私を探してくれるということを期待していた。

 ............自分から離れたのにね。



        ◇ ◆ ◇

 美弥(みや)

 にこにこと、私に笑ってくれていた彼女は、眉間から血を噴き出して倒れた。

 疾風(はやて)

 不愛想でめったに表情を変えないけれど、本当はすごく優しかった彼は、首元から血を流して倒れた。
 
 ............お兄ちゃん。

 いつでも一緒にいてくれたお兄ちゃんは、真紅の華を胸に咲かせて、ゆっくりと倒れていった。

 3人の顔が、血に染まる。

 私の目の前で、彼らは天に還っていった。

 うそだ、うそだ、うそだ。

 3人は死んでしまったということが、分かった。

 うそだ、うそだ、うそだ。

 ついさっきまで、笑ってくれていたのに。

 息をして、話して、私の目を見てくれたのに。

 ねえ、なんで?

 うそだ。

 信じたくない。信じられない。

 なんで、みんな先にいってしまうの?

 場面が切り替わる。

 私は、真っ赤な池の中に立っていた。

 真っ赤じゃなくて、黒かもしれない。

 黒じゃなくて、赤かもしれない。

 どす黒くて、赤黒い。

 そんな色をした池の中に、私は立っていた。

 池なんてものじゃなく、どこまでもどこまでも、赤黒い水は続いていた。

 その中に、誰かが倒れている。

 3人、誰かが倒れている。

 

「............大丈夫っ⁉」



 私はそのうちの一人に駆け寄り、抱き起した。

 美弥っ......。

 目から、赤い涙をながしている。

 目から、血を流していた。

 ......疾風⁉

 すぐ近くにいたもう一人を抱き起す。

 疾風も、目から血を流している。

 ............お兄ちゃんっ⁉......

 最後に引き寄せたのは、お兄ちゃんだった。

 血の涙を流している。

 3人は、血の涙を流し、私に近づいた。

 動けなそうだったのに......。

 ぐぐぐ、と力を込めて、私の腕をつかむ。

 彼らがつかんだ後に、赤黒い跡が残った。



『タスケテ、......タスケテ、......タスケテ..................タスケテ』

 

 彼らは枯れた声で、私にただそれだけを繰り返す。



『タスケテ..................!』