【side《死神》】
逃げ出した《悪夢》は、俺》にとっては————。
..................《白昼夢》だった。
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ふわりと漂ってくるのは、アザミとアジサイの香り。
「独立」「報復」「厳格」。「冷淡」「冷酷」「無情」。
赤色と黒で統一された部屋。
その部屋の中に、数人の人たちがいた。
《残酷》、《悪魔》、《死霊》。
“絶死願”の幹部と副組合長。
風山 嵐真、楽死 座冷、水面 底除、械ノ字 織都。
“月殺”の総長、副総長、幹部の男たち。
皆が真紅の高級そうなソファに腰掛け、話し合っていた。
「うちの下っ端が氷空姫と遭遇し、
《ナイトメア》......すなわち奇打 心空に似ていたと写真を撮ってきています」
そう言って、風山が写真を取り出し漆黒のテーブルに置いた。
そこには、氷空色の髪をした、少女がたたずんでいた。
それを見て、フッと口角を上げる。
コンコン、と静かな空間にノックの音が響いた。
「はいれ、《死術者》」
命じると、するりと部屋の中に一人の少女が入ってきた。
真紅の、まるで血のような髪色。
血液の垂れた形が描かれている漆黒のシルクハット。
同じ模様が描かれている漆黒の長いマント。
軍服を着て、マントとシルクハットを身に着けた少女は、“絶死願”の幹部の一人。
「接触しました。..................大切な方々を、かばい、私に向かってきました」
彼女からの知らせを聞いて、ますます口角が上がった男。
やがて、男は高らかに笑い出した。
「そうか、っそうか............そうか、」
来たばかりの知らせをかみしめるように、何度もつぶやく。
笑いが収まらなかった。