この星に生まれた、何よりも誰よりも。

 そう告げて、彼女はふわりと飛び上がる。

 そのまま、朝を迎える前に彼女は消え去った。

 ......ねぇ、なんでみんなはわたしが何も言わずに逃げたのに、探してくれてたの?

 嫌わないの?

 恨まないの?

 憎まないの?

 怒らないの?

 私はゆっくりと、後ろを振り返る。

 そこには、みんながいて。

 私がいたって、探してくれてたみんながいて。

 どんな顔をすればいいのかわからなくなる。

 なんで、ここに来たの、私を探してたのって怒ればいい?

 笑えばいい?

 喜べばいい?

 悲しめばいい?

 どうしたら、みんなを守れる?

 いろんな感情がごちゃ混ぜになって、どんな顔をすればいいのかわからなくなる。

 私、今きっとひどい顔をしているだろう。



「............もう、なんできちゃうかなぁ......」



 みんなに会えて、久しぶりなのに、出てきたのはそんな言葉。

 みんなに会えて、うれしくて、喜んじゃってる自分がいる。

 会わないために、逃げてきたのに。

 会わないために、何も言わなかったのに。



「そ、ら............?」



 みんなの、耳あたりがよくて、心地がいい声がする。

 懐かしい、声がする。

 東の空で、白い光があふれる。

 白い光が、あたりを優しく照らす。

 体中が、どくどくと脈打っているのがわかる。

 血が、出ているところがツキツキと痛むのが、分かる。

 私はなんだかよくわからない感情で、よくわからない顔をしたまま、崩れ落ちた。

 力......

 力が、入らない......。

 力が抜けていく。

 体中から、力が一気に抜けていく。

 なんか、疲れちゃったな............。

 目を閉じると、赤い光が広がる。

 ほんのりと色づいた白い光が、瞼の裏を赤く赤く染めていく。

 心地よいまどろみに落ちていく。



「————氷空っ! 氷空、しっかり!」



 意識が途切れる瞬間、聞いたことがないくらい、クールな星のすごく狼狽した声が、聞こえた。



「俺はまだ、お前に言わないといけないこと何も言えてねぇんだよ......!」



 心地よいまどろみの中で、キミの声が、聞こえた気がした。