この星に生まれた、何よりも誰よりも。

「え......」



 驚いて、言葉を失う。

 血、出てるのに......。

 すごく、痛そうなのに......。

 時円が追いついた。

 

「来夢、無茶しすぎだぞ」



 あきれたようにそう言う時円。

 にゃふふ、と笑う来夢。

 時円は笑って、こういった。



「......でも、お手柄だ」



 おてがら?

 混乱に陥った私に、二人は話し始めた。



「すごく探したんたぞ」

「速いじゃん、もうかけてみるしかなかったよー」



 なんで、この人たちは笑っているのだろう。

 私、逃げたのに。

 嫌われても、恨まれても、憎まれてもいいような、ひどいことをしたのに。

 私は、二人を目を見開いて見つめていた。



「......っ!」


 
 気配を感じ、二人を突き飛ばす。

 左頬に、何かがかすった。

 やがてかすったものはくるりと向きを変え、煙のほうに突っ込んでいく。

 煙。

 それはきっと“あいつ”の出てくる合図。

 私は視線をとがらせた。

 煙のむこうを見据える。

 ......なにかが、いる。

 

「あはっ」



 聞こえてきたのは笑い声。

 からからと笑う何かが、煙を切り裂いて近づいてくる。

 漆黒のシルクハット。

 シルクハットに描かれている、血液の垂れた形。

 漆黒のマントには、裾がシルクハットと同じ模様が記されている。

 軍服のような服を、マントの下にきている。



「......久しぶりね————《死術者(マジシャン)》」