そんなことを考える。

 街灯の光に、きらりと水滴が光る。

 カッ。

 ブーツが、音を立てた。

 なびく氷空色の髪。

 氷空色の瞳。

 ..................氷空姫。

 夜の街を歩いていると、声が聞こえた。

 懐かしい人の声。

 決して忘れられない、みんなの声。



「そらーっ! 見つけたぁー!」



 ......来夢(らいむ)かな、この声は。

 にしても「そら」って、本名いっちゃったんだな、時雨と氷雨。

 ふ、と笑ってしまう。

 私は近づいてくる足音から逃げるように走り出した。

 風を切り裂く。

 みんなに、会ってしまったら。

 みんなは、どんな顔するのかな。

 笑ってくれるかな。

 からかってくるかな。

 茶化してくるかな。

 怒るかな。

 泣くかな。

 心配してたって、言ってくれるかな。

 ああ、だめだ。

 みんなのことが頭から離れない。

 

「......そーらっ! なめるなよ!」



 そう言って、私の前に飛び出してくる来夢。

 舐めてなんてないよ。

 知ってるんだ、もうとっくに。

 私は、地を蹴った。

 跳ね上がり、来夢の向こう側に着地する。

 また走り出すと、今度は横から琉宇(るう)が飛び出してくる。

 ぶつかっちゃうって。