話を聞くたびに増していく疑問。

 氷空......。

 それが本当の、お前の名前。

 幸原 氷空。

 これが、お前の本名。

 お前が、決して言ってくれなかった......お前の名前。

 『ごめんね』

 この文字を、何を思って打ったのだろう。

 ごめんね_

 その一文を、どんな思いで送信したのだろう。



「......悪いな」

「あいつは昔から、一番重要なことは何も言わなかったからな」

「......俺らは、これ以上しらない」



 口をつぐんだ。

 迷惑......かけるとか思ってんのか。

 お前に迷惑をかけられるぐらい、どうってことない。

 それで、困ることなんて何もない。

 むしろ、迷惑をかけてほしいぐらいだ。

 お前にかけられる迷惑は、嫌いじゃない。

 何で俺は、あいつの本心に気づいてやれなかったんだ....。

 自己嫌悪に(おちい)る。

 

「はあ、はあ......って、」


 
 荒れたいきを飲み込む音が聞こえ、扉が開いた。

 リイカ。

 俺の幼馴染。

 ......氷空とカフェに行ったらしい。

 俺も、氷空と二人で行きたかった。



「ねぇ......っ、心空がいなくなったって、本当?」

「あぁ」

「うそ......っ」




 リイカは、顔を真っ青にした。