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 放課後。

 俺らはまた、昨日も来た場所に来ていた。

 屋敷。

 昨日の部屋まで行くと、



「............なぁ」



 話しかけられた。

 部屋の中に入り、校長の言葉の続きを聞く。



「......昨日。放課後何してたんだ?」



 ............は?

 何言ってんだ校長。

 教えてくれるって言ってたじゃねーか。



「歓迎会。心空の誕生日会もかねて」



 来夢がそう答えると、校長と理事長は息をついた。

 安心したかのように。



「......そうか」

「氷空、よかったな」

「あいつは、こんなこと俺ら以外にはなかったからな」

「ほんと―に、なんか言ってくれればいいのになー......」



 うるさい。

 眉根を寄せた。

 おいおいおい......昔話始めるんじゃねえよ。

 二人をにらむと、宥められた。



「まあ、氷空がいなくなった理由?」

「氷空じゃなくて、心空です」



 時円(じん)がそう返した。



「あー......。あいつの本名、幸原(ゆきはら) 氷空っていうんだ」

「............はあぁぁあ⁉」



 叫ぶ一同。

 校長と理事長と、俺を除いた一同が驚きに顔色を変える。



「心空って、偽名だったの⁉」

「そうだ」

「噓言ってどうするんだよ」

「何言ってんすか2代目!」

「落ち着け」



 騒いでいる奴ら。

 俺は、別に本名とか偽名とかどうでもいい。

 ただ、あいつに何があったのか知りたい。

 それだけだ。

 偽名だったかも知れないが、それには何か理由があるんだろう。

 心空......いや、氷空が、意味もなく俺らをだますわけない。

 あいつは、素直で、優しくて......強くて、そんな奴だ。

 意味もなく俺らをだます? そんなこと、あるわけがない。