この星に生まれた、何よりも誰よりも。

 ............言いたくないよね。

 思い出したくなんてない。

 汚い記憶。忘れてしまいたいほど、絶望と理不尽にまみれた記憶。

 向き合うことは、とっても苦しくて、悲しくて、つらい。

 

「............言わなくても、いいけどさ」



 桐谷くんの顔を覗き込む。

 燃えるように、赤い瞳。

 “煌舞”の総長。

 その赤い瞳は、今は真っ暗だった。

 もう、その瞳の中には何も残ってない。



「忘れないで、あげてね。否定しないで、あげてね。みんなも、自分も。自分なんて許せないと思うけどさ、そうしたらきっと、悲しむと思うよ。信じてくれている、誰かが、さ」

「............でも、オレにはそんな奴なんて、いない」

「いないのは、あなたが心から向き合ってないからだよ」



 だから、まずはみんなを信じてみなよ。そしたら、何か変わるかもよ。

 そう微笑むと、桐谷くんがうつむいた。



「......なにも、変わらなかったら? そうしたとして、誰も返してくれなかったら......」

「やんないとわかんないじゃん? でも、もし。誰も返してくれなくても、——」



 そこで言葉を止めて、私は屋上の扉へと歩き出した。

 取っ手に手をかけて、振り向く。



「——私が、信じてるから。あなたは、大丈夫だよ」



 黄昏時。

 金色に染まる世界。

 逆光で、影ができて、顔がうまく見えない。

 この世界でも、あの世界とつながれる時間。

 彼に奏でた、あの鎮魂歌。

 あれは、お兄ちゃんと作ったんだよ。

 『——おれが、しんじてるから。ソラは、だいじょうぶだよ』

 お兄ちゃんの、小さい頃の、言葉。

 なのに、あの頃の私には、とてもキラキラしているように見えた。