そのまま、普通に時間が過ぎていき。

 帰るときの、挨拶が終わって、その時だった。



「星っ!」



 そんな声が聞こえたのは。



「あっ、ばか...........」



 星はちらりと私を見た。

 ...........え?

 もう、何が何だかわからない。

 きれいな濃紺(のうこん)寄りの黒髪、きらきらと動くたびにきらめくはちみつレモン色の瞳。

 キャラメル色のカーディガン。

 この子は......あの時の......?

 この前、街に行ったときに、助けた女の子......。

 髪の色や、瞳の色は違うけど。

 あの時の女の子だった。

 あの時の女の子だって、——分かった。

 

「リイカ、おま...........」



 星があきれたように言う。

 え?

 なんなの...........?

 星、この子のこと知ってるの?

 ピクリとも動かない私たちを見て、彼女はきらり、と目を輝かせた。



「あ、ごめんね~。あたし、星の幼馴染なの!」



 ——幼馴染。

 ドクン、と心臓が大きく揺れる。

 チクリと、心が痛んだ。

 星、このこと...........幼馴染なの?



 「心空ちゃんじゃんっ」



 え?

 心が、ひんやりと冷たくなっていく。



「はじめまして、櫻川 梨衣花っていいます!」



 私、星と仲良くなれたかなって、思ってたのに......。

 意味も分からず、無性に悲しい気持ちが広がった。



「よろしくね」



 彼女は、にこりと。

 私に向けて、そう言った。

         ◆