この星に生まれた、何よりも誰よりも。

「あああー! また陽詩が心空を独り占めしてるぅ——‼」

「そんなんじゃないですー」



 もうすぐ授業なので二人で教室に戻ると、陽詩と大空(つばさ)翼皐(つばさ)が、またそんな会話を始めた。

 あ、はは............こんな光景ももう見慣れたな............。

 ふふ、見ていて楽しいけど......、もうチャイムが鳴ってしまいそう......。

 

「陽詩、また次の休み時間お話ししようっ?」

「大空、翼皐、またあとでねっ......」



 そう3人をなだめて、自分の席へと戻るのを見届ける。

 見届けてから、席について教科書を開く。

 すると来夢(らいむ)が、私のほうへ振り向いてきた。



「きょー、おれ当てられそうなんだけど、ここどーゆーこと?」



 教科書を手に、私に尋ねてくる来夢。

 私も、来夢が手にしている教科書を覗き込んだ。

 

「どこ?」

「ここ」



 来夢がトンっ、と教科書に指を立てる。

 私も、教えるためにその問題を見る。

 ............あ、これ、この前やった問題の応用だ。

 

「これは応用問題だよ。それは一つずつ展開していって............そしたら、ここをこう移項して......」

「んー......。でもそしたら、ここはおかしくならない?」

「んー、そこは......」



 問題について説明する。

 来夢は物分かりがよく、吞み込みも早いので、少しの間に問題を解けるようになっていた。

 

「............ってことは、ここはこうなるから......」

「あー、じゃあここは、こうなって......」

「うん、............ってことなんだけど、分かった?」

「わかったー! これで当てられても平気だぁー!」



 元気よく返事する来夢を見て、うれしくなる。

 役に立てたみたいでよかったっ......。

 すると、さらりとかるく髪が持ち上げられる。

 ......ん?

 前を見ると、来夢が私の髪をやさしく持ち上げていた。

 っわああ⁉ な、何して......⁉

 そう声を上げそうになって、慌てて声を飲み込む。

 そ、そんなにされたら、ウィッグが外れちゃいます......。

 そう言いたかったけれど、ここでそんなことは言えなかった。

 困って来夢を見る。

 来夢も私を見つめていた。

 ............え?

 そう思った直後、はっと我に返り、私は教科書で顔を隠しながら来夢に顔を寄せた。



「は、はなして......ってば、これウィッグなの......!」

「ふーん?」



 小声で会話をする。

 でも、来夢は相変わらず私のウィッグの髪を触ったままだった。

 動きすぎると、とれちゃうっ......。