............なんか最近おかしいです。
とてつもなくおかしい。
気のせいではないです。
......軽率な突込みは待ってほしい。
本当におかしい。
私が、なぜこんなにもおかしいおかしいって言ってるっていうかというと............
「......ひゃっ」
「...っあぶな。気をつけろよ」
......移動教室から帰る途中、階段でこけそうになった私を支えてくれた、神楽くんのことで。
さらりと風が吹き抜けているのは、窓に近いから。
あの“月殺”が攻めてきてから1週間。
な・ぜ・か、神楽くんが
「心空、気をつけろよ?」
優しくなっています。
神楽くんは、私の顔を覗き込んでそう言ってくる。
やっぱり、神楽くんはいけめん? さんで。
そんなことされたら、フカクにもびっくりしちゃう。
お顔がきれいなのに、きっと見目の麗しさに気が付いていないんだ............、と思いながら「う、うん............」とビミョウに視線をそらして、うなずいた。
「えええ⁉ それはもう恋の始まりだよ心空!」
「はっ............ええ?」
休み時間、陽詩と屋上でお話をする。
いや、いったいいつからこんな話になった?
神楽くんがなんか最近すっごく優しくしてくれてる............でも女嫌いって言ってたのになんでだろう? って陽詩に打ち明けたら、そんなことを言われてしまった。
そんな、恐れ多い............!
でも、本当になんで最初は嫌がってたのに、最近は優しいんだろう......——って、不思議。
恋なんじゃないよ、だって神楽くんだよ?
友達............というか、班のメンバー?
友達なんて言ったら失礼かな............と思いつつ、私は否定の言葉を口にした。
「恋なんかじゃないよ。私にとって友達だし、神楽くんにとって私は、その他大勢の女だと思うし......」
「え、でも神楽くんが優しいんだよね?」
「うん、そうだけど......」
「神楽くんぜーったい、心空に惚れてるんだよー!」
「まさか......そんなことあるわけないよ」
「いや!」
そう力強く言った陽詩は私を見つめて、きっぱりと断言した。
「ある! 絶対、心空に惚れてる!」
「何言ってるの陽詩......⁉」
「うん、これは絶対惚れるにきまってるって!」
また、私を穴が開くほど見つめて言う陽詩。