◆ 

 ぱたん、しめられた扉。

 私は、後ろ手に扉を閉めて、カバンを下ろして、部屋着に着替える。

 そのあと、棚に向かって手を合わせた。

 

「......○○○○、○○○○○」



 静かに言葉を告げて、私は合わせていた手を下ろした。

 
  『......ごめんね、お兄ちゃん』 

  棚の上には写真立てが置かれていた。

  その写真の中に映っていたのは、氷空色の瞳と髪を持つ少女と空色の瞳と髪を持つ少年が、笑いあっているところだった。


 私の心はどこにありますか。

 お兄ちゃんが、殺されたあの日に、私は心を置き忘れてしまったんですか?


 写真立ての中にいる、幸せそうな二人は、もう何も語ってくれない。

 ましてや、天に還った人はもう何も語ってくれることはない。