そう思ったとたん、体が動いた。

 死んでほしくない。

 “あの人”みたいに、目の前で、死んじゃダメ......!

 “あの人”が、天に還った光景が、目の裏に焼き付いて離れない。

 気づいたら、宙を飛んでいた。

 着地する時間も惜しくて、宙にとんだまま時円のところへ進む。

 けど、やっぱり重力には逆らえなくて、着地をする。

 そのまま、私はナイフを蹴り飛ばした。

 ——カキン!

 ナイフが飛んでいく。

 その間に、私が急に現れたことに驚いている“月殺”の人を倒した。

 私はもう、その時の勢いで軽々と宙を飛び、技を繰り出してまだ残っている人たちを倒していく。

 

「......ここにいたか」

「......っ......⁉」



 倒しているうちに、ある人物から目が離れなくなる。

 ——風山(かざやま) 嵐真(らんま)

 瞬間、息ができなくなったみたいに苦しくなる。

 

「おまえ、なんも変わってねぇなあ」



 そう私にしか聞こえない低い声だささやかれて、私の体は金縛りにあったみたいに動かなくなる。

 ......っ...。

 “あの人”が殺された場面が、頭の中に浮かぶ。

 

「あの時から、ずっと......あの時のまんま」


 フッ、と余裕のある笑みを唇の端に浮かべて、私を見ている。

 かわって、ない......?

 あの時から、ずっと......?

 

「......ぁ......」