新しくなった席に、ドカリと座る。



「............別にいーよ」

「え、あ......でもっ............」



 そう言って、ためらう女。

 その姿に、またイラついた。

 隣が、俺じゃいやなのかよ......。

 結局、女は迷ったそぶりを見せた後、俺の隣に座った。

 この女が転校してきてから4か月後。

 転校してきたときはまだ5月で、木々が緑に染まってきていたのに、今ではもう9月。

 緑だった派の色は、黄色やオレンジ、茶色、赤に色を染めている。

 そんな光景を窓際で眺めながら、俺は回想をしていた。


           ◆

 俺に近づいてくる女と男は、いつでも俺を利用しようとした。

 女は、あれこれ買ってとか、こびてくるし、とにかくもうべたべたで、超うざい。

 女なんていないほうがいいだろ、ってずっとどこかで思ってた。

 ............なのに。

 『新しい席ができたら、そっちに移るので今はここにいてもいいですか......っ?』

 誰かのやさしさが詰まった声がして、世界が鮮明になった気がした。

 その女だけはこびて来なくて。

 その女だけは、俺だけを見てくれた。