【side星】



 『新しい席ができたら、そっちに移るので今はここにいてもいいですか......っ?』

 今もまだ残ってる。

 彼女の、深い悲しみを含んだ......こっちが泣きたくなるくらいのやさしさが、詰まった声が。

          ◆

「あ~⁉」



 来夢(らいむ)のうるさい声が響いた。

 席替え。一か月に一回やってくる。

 といっても、暴走族は班を変えるわけじゃない。

 班の中で、席替えをするだけ。

 くじ引きを自分で作って引いているが、その席の位置に驚いているらしい。

 

「おれ今の時円の席だ⁉」

「あー、オレは............(ひかり)の席だな」

「え、......っと、僕は............来夢の席」

「心空はどこだった?」



 来夢が聞いて、その女は答えた。



「私は、隣に移るだけだよ! あ、でも............」


 
 ちらり、と女が俺のほうを見た。

 俺は、その女の席の隣だ。

 

「私、席変えようかな......!」

「え⁉ なんで⁉」

「いや、だって............」



 そのまま俺のほうをちらりと見てくる。

 ..................何それ。

 なんだか、無性にいら立って、席を立った。