ノックもせずに理事長室の中に入る。
「そ、............⁉ こ、ここ心空⁉」
氷空と呼び掛けて、慌てて言い直した時雨。
私が来たことに驚いてるように見えた。
「どういうことって、何がだ?」
「いや、あんた............時雨って、“煌舞”の総長なの⁉」
あせったように聞いてくる時雨に、大声で返す。
やばいやばい。
いま、時雨にあんたって言いかけた。
............いや、アウトか。
私今、バリバリ言ったよな?
ごめんなさい......。
時雨には心の中で謝っておいた。
でもやっぱり気になって、時雨を見つめる。
「......あ、あぁ」
「なんで言ってくれなかったの?」
「え......、だって、氷空、暴走族嫌いじゃ......」
「確かに嫌いだけど、私は時雨と氷雨のこと嫌いじゃないから、言ってよ。
暴走族も、っ全部が全部嫌いなわけじゃない......!」
暴走族は、嫌いだった。
暴走族は、嫌い。
でも、それは。
“あの人”を殺したのが暴走族ってだけで。
“あの人”を殺したのが暴走族ってだけだから。
暴走族が全部嫌いなわけじゃない。
私が嫌いな暴走族は、“あの人”を殺した........................“月殺”だけだから。

