「なに、言って......」

「え、そりゃわかるよ。だって、君の目がそう言ってた」

「は?」



 眉間にしわを寄せられる。

 生きてるって感じられて、ちょっとかわいい。



「自分を、あきらめなくていいんだよ」

「お前に、何がわかるんだっつーの」

「わかんないよ。わからないから、想像して、思いあって、やってくしかないと思うよ。だから、私はここにいるんだ」



 ふわりと、笑う。

 笑ってみせる。

 そして、私は一人の、男に言いたいことを言った。



「あなたが生まれたとき、どれだけの人がそばにいた? 
 あなたが泣いたとき、どれだけの人がそばにいた?
 あなたが笑ったとき、どれだけの人がそばにいた?」

「え............二人だけ」

「じゃあ、その二人を大切にしなきゃだめだよ。
 死んだら、もう会えない。会いたいと思っても、会えないの。
 だから、大切にしなきゃだめだよ。
 自分がどうしたいか。どうなりたいか。それで、生きなきゃだめだよ」



 もう、会えないの。

 会いたいと思っても、会えないの。



「そっか、名前。考えないとね」



 番号じゃ、ダメなんだ。

 あなたの大切な人には、名前で呼ばれたいでしょ?



「——泣河(ながわ) (ゆう)。今日から、君の名前ね」

「待って、お前の名前は——」