まあ、食ってしまいたいくらいには。



目の前で交わされるふたりの言葉は。

ついさっき出会ったばかりの人たちのそれとはたしかに思えなかった。


ということは本当に仲いいんだ……。

というか愔俐先輩もちゃんと友だちいたんですね。



そのあとすぐに予鈴のチャイムが鳴ったから先輩たちとは別れた。


急げ急げとほの空ちゃんと廊下を走りながらも、どこかふわふわした気分でいた。


愔俐先輩のことなんかもう頭になくて、むしろ記憶から消しちゃって。

別れる直前、敬郷先輩が言ってくれたことを延々とリピートしていた。




『俺も敬郷のほうがいいな、桃ちゃん』



どうしよう、わたし、敬郷先輩のこと……


推しになっちゃいそう。



ちらりと後ろを振りかえる。


敬郷先輩はまだこっちを見ていた。

しかも手まで振ってくれるから、嬉しくなって手を振り返した。


……は、いいものの。




「……だッ!」



前方不注意のせいで、顔から思いっきりぶつかってしまった。


くらりとした視界の先には、よく廊下とかにある柱の出っ張りが。