まあ、食ってしまいたいくらいには。



いつの間にそこにいたのか。

敬郷先輩のななめ後ろから見下ろしてくる愔俐先輩をこちらもじっと見つめ返す。


こういうときは目を逸らしたらいけないって知ってるもん。

山で遭遇したクマと、学校で遭遇した愔俐先輩の対処の仕方は同じはず。


強者は弱者に些細なことくらい譲ってほしい。先に視線を逸らしてほしい。




「ああ、ふたりは生徒会つながりなんだっけ」



思いついたような敬郷先輩のひとことにより。

わたしの首の皮一枚はつながりました。


何事にも興味なさげな視線が敬郷先輩に移った瞬間、せき止められていた冷や汗がどっと背中を伝っていった。


敬郷先輩はそんなわたしの様子に気づかずに続ける。




「俺と愔俐は昔からの付き合いでね。ええと、知り合ってもう何年目になるかな?」

「今年で3年目」

「あはは、そんなに経ってなかった。おかしいな、愔俐とはずっと昔から一緒にいた気がするのは俺だけか」

「お前だけだよ」

「俺だけだったかぁ」