まあ、食ってしまいたいくらいには。



「学生手帳、落としたよ」

「へ? あ、ほんとだ。すみません、ありがとうございま……」


振りかえったわたしの前に立っていたのは、思いもよらない人物で。

わたしは追加でペンケースまで落としてしまった。


相手は嫌な顔をするでもなく、それも拾いあげてくれて。




「大丈夫?はい、桃ちゃん」


ごめん、と笑う彼は「拾うときに名前見えちゃって」と爽やかにつけ足した。




「う、うきょ、敬郷(うきょう)先輩……!」


ど、どうしよう。どうすればいい?

わたし、今、学校一の人気者に認識されてる。

というか話しかけられてる。


ドッ、ドッ、と無条件に速まる鼓動。