職員室に寄ったあと、ひとけのない校舎を出る。
なんだか怖いなあ、と思いながら。
いつも人がいる場所って、なんで閑散としたらこんなに不気味になるんだろう。
わたしは人が好き。だから、静かな場所よりも騒がしい場所のほうが好き。
静かな空間から逃げるように、足早に中庭を突っ切ろうとしていたときだった。
「わっ……」
曲がり角で、誰かとぶつかってしまったのは。
誰かを確認するよりも先に、その人が落としたものに目がいった。
「すみません、ごめんなさい、何か落ちて──────……え、」
どくん。
心臓が激しく跳ねて、止まった気がした。
それは栄養補給ブロックだった。
箱にはなにも書いてない、商品名すらない。
だけどわたしには、それが栄養補給ブロックだとすぐにわかった。
顔をあげる。
そこにいたのは、
「……嘘」
生徒会長の、玖桜愔俐だった。



