ほっぺの腫れはなかなか引かなかった。


湿布を貼ったまま登校すると、めずらしく感情をむき出しにしたほの空ちゃんがその女の子たちの名前をしつこく問いただしてきた。


それでもわたしは言わなかった。

庇っているわけじゃなくて、単純に名前がわからなかったんだ。

まあ、知ってたとしても言わないんだけど……。


納得がいかなかったのか、ほの空ちゃんはしばらくむくれていた。




「あの、コピー機壊れました……」


数日後、生徒会室にて。

わたしはコピー機相手に悪戦苦闘していた。


何回ボタンを押しても紙が出てこないし、ずっとピーピー鳴ってる。

困り果てていると、近くにいた三栗くんが様子を見に来てくれた。



「どれ?ああ、これは紙詰まりを起こしてるだけだよ」

「こ、壊れてない?」

「壊れてない壊れてない、大丈夫」


三栗くんはしゃがみこんで、側面のカバーを取り外した。

どうやらそこに紙が挟まっていたらしく、やさしく引っ張り出している。


なるほど、そうやったらいいんだ……。



申し訳なく思いながら、わたしも中腰になってその作業を見守っていたときだった。




「鈍くせぇ、コピー機もまともに使えねーのかよ」


ソファに座っていた奈良町先輩に、バカにするように鼻で笑われた。

スマホに視線を落としたまま、さらに冷たい言葉をぶつけられる。



「ケーキの上に仕事もできねーとか終わってんな」